明日も生きたい日記

うつ病と適応障害を患ったアヤセが明日生きたいと願うブログ

身近な幸せを大切に

 うつ病になって人生のレールからドロップアウトした時から、レールに乗っていた場合の幸せを渇望して、それがもう一生涯手に入れられないことだと気づき絶望する、こんなことを繰り返していた。

 しかし、今はそういうことはほとんど起きなくなった。ちょっと頑張れば手に入る幸せ、明日の幸せ、来週の幸せ、遠くても来月の幸せ、そういった身近な幸せを意識できるようになった。とても心が楽だ。

 

 

 自殺未遂を犯して精神病院の閉鎖病棟に閉じ込められた。経過順調となって退院してかかりつけ医のところに行く。医師から、薬はあくまで症状を緩和して毎日を過ごしやすくするためのもので、根本的にうつ病を治療するならあなたにはカウンセリングが必要だと言われた。そこで現在の心理士を紹介してもらう。うつ病に罹患してからの一番のターニングポイントは、きっとこの心理士との出会いだろう。

 心理士と最初に取り組んだのは認知行動療法認知療法だ。行動や思考を紙に書いて観察し、認知の歪みをきれいにしていく作業だ。しかし、私の頭はとても固くて何回繰り返してもなかなかうまくいかなかった。

 カウンセリングとは所詮こんなものかとあきらめていた時に、心理士から別の課題が出た。それはマインドフルネスに取り組むというものだった。いや言い方がおかしいな。マインドフルネスな状態を目指しましょうというものだ。

 課題は下記の本をから毎週一つか二つと、瞑想だった。アフィリエイトになってないので安心してどうぞ下記のリンクを踏んでください。  

「今、ここ」に意識を集中する練習

「今、ここ」に意識を集中する練習

 

「マインドフルネス」は、禅の考え方をベースに宗教的な要素を排したもので、「今、ここで起きていることに意識を完全に向けて集中すること」といわれています。

グーグル、インテル、ナイキ、マッキンゼーゴールドマン・サックスをはじめとした世界の先端企業で社員研修に取り入れられるなど、「心のエクササイズ」として広まっています。
また、プロテニスのジョコビッチ選手など、トップアスリートも実践し、注目されています。

「今、ここ」に意識を集中すると、過去の出来事にくよくよして後悔することもなく、未来への不安もなくなり、余計なことを考えなくなります。

  つまりは、不安や恐怖などの負の感情は過去か未来、どちらかを考えることで出てきてしまうから、今現在に集中しましょう、意識を向けましょう、ということらしい。

 課題は、例えば


・練習1 利き手でないほうの手を使う(→ 初心に戻る)
・練習10 電話が鳴ったら深呼吸する(→ 動作を止めることによって、体と心の緊張がほぐれる)
・練習21 青いものに目をとめる(→ 思いもかけないところに青い色があることがわかると同時に、空の青さにあらためて感動するなど青い色がより鮮やかに見えてくる)
・練習40 「老い」の表われに目を向ける(→ 老いは「比較」によって感じるため、この瞬間を生きる と年齢を意識しなくなる)
・練習47 食べるものに思いをはせる(→ 数えきれないほど多くの生き物の命のエネルギーを取り込んでいることに気づき、感謝する)

 のようなものだ。

 最初は私のことを馬鹿にしているのか?と思った。だって、課題といっても本当に簡単そうなことだったから。でも心理士は、アヤセさんは将来の遠くのことに対して不安を感じやすいし、認知療法のような静的な治療よりも、何かに取り組むような動的な治療が向いていますよ、と言った。こちらの方は行動療法らしい。

 実際に始めてみると意外と難しく、例えば利き手と反対側の手で歯磨きをすると口の周りがべちょべちょになってしまう。瞑想も真剣に取り組むと、雑念がじゃんじゃんと湧いてきて、頭の中ってこんなにいつもうるさいのかと驚いた。

 本を3分の1くらい消化したころだろうか。日々のしんどさが減っていることに気づいた。いとこが車を買ったとか、友達が家を買ったとか、そんなことを聞いても何も負の感情が生まれなくなっていた。将来住宅ローンが組めないとか、医療保険に入れないとか(実際は引受緩和型保険というものがあって保険料は割高だが入れる)、そんなことは思い出さなくなった。それよりも、今日の自分、明日の自分に意識が向いている。毎日の一日一日を丁寧に過ごしているような感覚を覚えた。

 

 

 少し前、銀行員時代の同期と久しぶりに飲む機会があった。東京駅八重洲口側のイタリアンバル。1人3,500円くらい。とても楽しくて、お酒がほとんど飲めないのにサングリアを2杯も飲んでしまった。

 私の同期はとても優秀な人たちで、順調に昇進して課長代理になっていた。年収900万円くらいだと思う。スムーズにいけばあと2年で課長に昇進するが、その前に年収は1,000万円に乗るだろう。

 昔の私だったら、それを目の当たりにして悔しくて悔しくてたまらなかっただろう。同期と比べて、なんて自分は惨めなのだろうと思っていただろう。でも今は違う。同期の昇進を、結婚を、出産を、子育てを、素直に「幸せそうで良いね」と伝えられる。同期の幸せを喜べるようになった自分に、私は嬉しくなった。

 

 丁寧に淹れたコーヒーが美味しい、2割引きの豚ひき肉が買えてうれしい、作った料理を恋人が美味しいと言ってくれた、来週はゲームの発売日だ、来月は安くて良い宿が予約できて楽しみだ、こんな小さな、身近にある幸せを今は味わって生きている。

 もちろんこんな病気を患っているから、将来のことが不安であることに変わりはない。

 でも、手の届く幸せを大事にして、これからも毎日を丁寧に生きていこうと思う。